自尊心とプライドが高かった大学の部活の時の話
なんだかよくわからないままに入った体育会系の部活。
「日本一を狙える」そう言われて、なんの取り柄もない、何者でもない自分でも日本一になれる可能性があると思い決意した。
ゴールデンウィークの新歓まではゲスト扱いのような形で、先輩はみんな優しかった。
なんていい人たちばかりだ、と思った。
しかし、それ以降は変わったように厳しかった。
それ自体は仕方ない。
競技に打ち込むも、なかなか上達することができなかった。
入部したのは早いタイミングだったが、どんどん追い抜かれていく。
その後のランや筋トレのメニューもついていけない。
足をつった。
普通にキツかった。
既にそこから、どうにかして手を抜こうと考えていた。
大学内をぐるぐる回るランニングでは、1人だけ置いてかれるとショートカットして水増ししたことがあった。
トレーニングルームで行う腹筋も、できるだけきつくないフォームでごまかしていた。当然、鍛えられない。
先輩に「サボってる」とたまには言われるが、基本は真面目で、きちんとやっている感じは見せたかった。
初めての大会。
もちろん自分自身は全然結果が出せなかった。
でもそれよりも驚いたのは、あんなにすごく努力している先輩たちでも、ほとんど他大学に太刀打ちできない姿だった。
なんという世界に入ったのか・・そうはっきりと感じた。
だんだんと上手くなる同期は、よりもっと練習して上手くなる。
自分は、若干既に諦めていたところがあった。大会の時の負け方が、他大学の同期に圧倒的な力を見せられて、届く気がしなかった。
もちろん先輩たちには色々言われる。
けど、そんなありがたいアドバイスもどこか他人事のように聞こえていた。
そうして夏に4回生が引退。
その夏の合宿は地獄のようにしんどかった。あと1回生はやはりとても肩身が狭く、コミュニティが好きになれなかった。
新しい幹部は、厳しい先輩が多かった。
当然のように色々指摘されるが、何もできない。
練習後、先輩から呼び出されたが、バイトの予定が入っていたので先輩に何も言わずに帰ったこともあった。
冬は大会が少なくなり、モチベーションが緩むのもある。
なんでもない日に、怖い先輩が就活の時に、よくわからない予定を入れて休んだこともあった。
トレーニングを積んでも成果が出ない。
いつの間にか、ネガティブな言動ばかりしていた。
「今日は天候悪いから練習できないのでは?」
先輩からの指導も、教えてもらうのにあまりいい態度をしなかった。
どこかで、指導してもらうことによる何か、プライドが邪魔をしたのだと思う。
そんなまま、2回生になった。
後輩が入部してくる。
なぜか最初は先輩面して色々面倒見ていましたが、後輩だけ強気なメンバーって基本いいように見られないですよね。私ならそう思います。
結果、幹部の先輩たちが怖くて、厳しくて、真面目に向き合えませんでした。そうする間にその方たちも引退。3回生になりました。
1つ上の先輩たちは優しく、また長年の付き合いでもあるので勝手が分かり、ますます勝手に好きに過ごしていました。
そうしているうちにいつの間にか、真面目な後輩たちにもだんだんと負けてくるようになりました。
あとは、その頃から、他大学の誰々が強くて、みたいな感じでレース表を見ながら、評論をしていました。
レースするのは弱くて勝ち上がれないので一瞬ですが、その他のレースを見る時間はたくさんありました。
なので、他の人たちの試合を見て、感動したこともありますし、予想をしたり、していました。
そういうところからも、だんだんと当事者でなくなっている感覚がありました。
特に変なことはしないけど、競技は上手くもない、そんな立場。面倒ですよね。
相変わらずネガティブなことだけ言って、口だけのレース評論家。
そう呼ぶのがぴったりだったと思います。
いかに、多くの練習から手を抜くのかだけを考えてやっていた。
周囲は、もっと真剣に、研究をして必要以上にもっと練習をしていた。
学年が上がり、先輩になり、部活のコミュニティはとても居心地がよかった。
だからこそ、その空気を変えることもできなかった。
競技よりも、コミュニティに属している、という方が強かった。
同期や後輩とご飯に行き、色々評論して、色々言って帰る。
それが楽しかった。
厳しくない人たちと、愚痴やなんなりで語り合うのが、自尊心やプライドにはとてもよかった。
競技的にはほぼ何も成長しないまま、4回生を迎えて、案の定負けて終わった。
終わっても、主将がどうだとか、人や環境のせいにして話したことは覚えている。
もしくは、他大学の誰々が調子悪かったとか、ケガだとかなんとか言っていた。
とても気持ちよく、居心地がいい空間で楽しかった。
そりゃそうだ。
今から振り返ると、なんて空虚な時間だったのだろうと思う。
今でも、潮の香りがすると思い出す。