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本当はあまり耳にしたくないマネジメント論

本当はあまり耳にしたくないマネジメント論。

 

はじめに

マネジメントに関する情報は、やはりネットに転がっているものは「社会的にいい」言説ばかりあるのが気になりました。

 

チームワークはいいもの、メンバーの教育をするべきである、など。

もちろん、パワハラはしてはいけないというものなど、明らかに社会的にも受け入れられて、かつパフォーマンスにも影響を及ぼす言説ももちろんあります。

 

しかし、社会的にいいものと、実際のマネジメントのパフォーマンスが異なるようなものは、マネジメントには有効にもかかわらず、あまり世間には出てきません。

 

その理由は明快で、発信者のメリットがないことです。

例えば、「できない人のサポートをするよりも、できる人のサポートをする方がいい」と発信すると、多くの人は感情的にあまり受け入れられませんし、差別やら何やら言われてしまいます。

 

少なくとも、不特定多数に向けて書くのは向いていません。

 

いつぞやか、人事アカウントのTwitterでの「人事の仕事は採らない人を見極める」みたいなニュアンスが炎上していたのも、同じ理屈です。

 

ただし、マネジメントに関するインプットを行ってアウトプットした反応や実際の事業の成果を見てきて、多くの人にとって「本当はあまり耳にしたくない」というテクニックも存在すると感じました。

 

今回は、そちらについて紹介します。

 

メンバーのモチベーション管理で生まれる成果は大して大きくない

まずはじめに、マネジメントの成果とはなんでしょうか。

それは、メンバーをコントロールすることではなく、自チームの組織の成果を最大化し、ビジネスでの結果を出すことです。

上手にマネジメントしようがしまいが、結果で判断すべきです。

というのも、非営利団体であれば別にいいですが、企業の存在価値としては時価総額であり、ビジョンであり、今はパーパスなんて言葉も使われます。

そうしたゴールに沿った時の手段がマネジメントなのです。

 

マネージャーに昇格させる機会も見てきましたが、大体のマネージャーの当初の不安は「うまくメンバーをマネジメントできるか」、プレイングマネージャーであれば「プレイヤーとマネジメントの時間」を気にします。

これは基本的に大きな間違いであり、勘違いであるケースの方が圧倒的に多いです。

 

仮に、メンバーのマネジメントができたからといって、成果が出せるのでしょうか。

 

もちろん、現状よりかは少しはよくなるとは思います。

ただ、上乗せできるのはせいぜい10%でしょう。

 

もちろん、あと10%上乗せすればパフォーマンスとして素晴らしいという状態であれば、メンバーのマネジメントを注視すべきです。

 

ただ、そうでないのなら、まずはチームとしてどうやって成果を出せるか、から考えた方がいいでしょう。

 

メンバーのモチベーションを長期的に保つことは難しい

10%の上澄みにしかならない説明の補足です。

まず第一に、現状がモチベーションが低いメンバーが、高くなるのは比較的難しいです。

もちろん状況にもよるのですが、メンバーは目標設定なり給与テーブルなり、理解した状態だとして、それでも頑張らないのであればそれは「それぐらいしかできないもの」だと捉えた方がいいでしょう。

例えば前任マネージャーが酷くてやる気が出ない、と言った場合もありますが、その上でメンバーが頑張らなければ評価されないわけです。

 

また、メンバーのモチベーションを仮に何かトリガーで上げることができたとしても、簡単にモチベーションが上がるメンバーほど、モチベーションが下がるのも早いです。

 

色んなプレイヤーを見ていると、パフォーマンスのボラティリティが高い社員は特定の月だけ目標達成率が高くて月間MVPの常連になるが、パフォーマンスが悪い時はとことん悪いタイプがいます。その逆に、月間MVPとは無縁だが安定する社員もいます。

それは、そういう特色というだけで、ボラが高い人を安定させるのも間違っていると個人的に思います。

 

メンバーをマネジメントするよりも成果が出せることを考えることに注力する

基本的に、どのメンバーでもできる「仕組み」を作ることを注力する方が、成果が上がりやすいです。

モチベーションを上げていい資料を1回作ってもらうよりも、いい資料を作りやすいテンプレートを用意してモチベーションが高くない状態でも誰でも作れる状態にする、というイメージです。

 

大企業の社員はモチベーションへの依存度が少なく、成果が簡単に出せるというのは「仕組み」の部分が大きいです。

 

ゼロイチと仕組み作りは別物として考える

さて、この仕組みですが、仕組みを作る以前に、ちゃんと仕組みにして成果が出せるものなのか?を考えることもまた非常に大切です。

 

たまたま作れた化粧品を1000個作る仕組みができても、1つも売れなければその仕組みに価値はないからです。

 

なので、ゼロイチで何が価値になる施策かを考えるのと、それを誰でもできるようにするのは別物です。

よくいる普通のマネージャーほど、ここを混同してしまいがちです。

 

大学の頃、研究の題材で別々に考えた方がいいという例えを同期が「シャンプー&リンス」と例えていたのがとても記憶にあるので個人的には「シャンプー&リンス理論」と呼んでいます。

 

ゼロイチのものを一気に展開したい気持ちは分かりますが、焦りすぎても価値のないものが出来てしまいます。

まずプロトタイプを作って1にしていいものかどうかの検証を重ねて、手動で価値があると確実にわかったものを、自動化・仕組み化します。

 

ゼロイチはマネージャーもしくはできるメンバー主導で行う

ゼロイチの部分こそ難しく、何をするべきかを判断する決め手であり、普通のマネージャーか素晴らしいマネージャーになるかの一つの境目です。

 

このゼロイチの部分は、マネージャー自身もしくは「できる」パフォーマンスの高いメンバーと一緒に行うのがベターです。

 

パフォーマンスが高くないメンバーは、必要に応じてプロセスの共有レベルでいいでしょう。

 

これには理由があり、基本的に一般メンバーとマネージャーレイヤーだと見えているものが異なるからです。メンバーは自分のことだけを考えていればいい、自分が給与が上がればいいと思っているだけの人もザラにいます。そうした人の意見を聞くと、ゴールに反する可能性があるからです。

 

例えば、売上および利益の向上を目標に商品の価格を値上げしようとします。マーケティングメンバーからは、目標としているCVRが下がるデメリットがあるので、反対することも普通にあります。競合優位性が1つなくなると活動しづらくなり、目標に対するインセンティブがあればそれを受け取れないダウンサイドリスクが生じます。

 

リストラなんかもいい事例です。

 

そうしたことから、大人数で進めるとそれぞれの気になったところを言い合って、無難なアウトプットになりがちです。大企業がゼロイチが苦手なのはそうした背景だと思います。

ともかく、現状や背景を共有して、現状維持バイアスでの批判ではなく賛同し、どうやればプラスに持っていけるかというメンバーを取り組むことが大切です。

できるメンバーが働きやすい環境にする

では、できるメンバーと普通のメンバーの差はなんでしょうか。

「なるほど、では普通のメンバーをできるメンバーに教育すればいいのだな」と解釈してしまう方もいらっしゃると思います。

 

結論を申し上げると、これも耳にしたくない内容ですが普通のメンバーをできるメンバーに教育するのは非効率です。

 

できるメンバーをよりできるようにする方が、簡単です。

 

メンバーの要素は採用>配置>教育であり、教育は最後の手段です。

またできるメンバーは勝手に色んなところから学ぶのであり、教育が〜と言っているうちは二流の組織です。

 

採用がほぼ全て、そしてそのメンバーのリソースをフルに活用して一番結果が出しやすいように配置・アロケーションを行う。

これだけです。

 

あとは、できるメンバーに配慮したオフィス環境・仕事環境にして、成果を出すサポートをすることが大切です。

普通のメンバーの意見を反映した環境になり、できる人がパフォーマンスしないのは本末転倒です。

 

もちろん、みんながハッピーになる環境があれば一番ですが、優先度としてはできるメンバーのサポートがその次に優先するべきでしょう。

 

ということで、マネジメントとしてはマネージャーおよびできるメンバーと一緒にゼロイチを作り、それを普通のメンバーでもほぼ同じクオリティでできるような仕組みを作る。

 

これが、耳障りの非常に悪いマネジメントです。

 

ただし、まだ続きがあります。

メンバーの前では本音と建前を使い分ける

本音は、普通のメンバーのパフォーマンスやモチベーションに期待してはいけません。

しかし、メンバーの前でそうした言動や態度を取ると、不思議なことに簡単にパフォーマンスが落ちるケースがあるのです。

 

普通のメンバーの前では、むしろ逆の「とても期待している」「期待の20%を超えたら褒める」ぐらいがちょうどいいです。

 

教育心理学ピグマリオン効果というものですね。

メンバーの前では、建前で「いいマネージャー」を演じましょう。

そう、それこそマネジメントでどうすればその人が成長できるか、を考えているかのような。

 

そして1on1を実施しましょう。ただ、1on1をすることがマネジメントだと考えないように。むしろ1on1は補足程度で。ただ、実施しないと期待されていないと言うことにつながりかねないので実施する、そして話を聞きましょう。

 

メンバーの前では、むしろ自分が下の立場でサポートしなければいけない、というぐらいのメンタルやスタンスで向き合いましょう。雑に扱うとすぐに気づきます。

 

マネジメントに向いていない人

マネジメントに向いていない人は、こういう人です。

素直な人・・・素直キャラでメンバーからも「頼りないけどまぁいいか」と思わせられるならいいですが、再現性を考慮するといい選択肢ではありません。素直な人は、時折ストレートに表現して、メンバーが言動に引っ掛かり余計なコストがかかることが多いです。

 

マネジメントをすごいものだと考えてしまう人・・・人をマネジメントすることを過剰に意識しすぎる人です。こうしたマネージャーはメンバーからは慕われると思いますが、成果を出すには物足りないです。普通のメンバーの意見を過度に反映しがちです。メンバーのやりたいことやビジョンをベースに考えてしまい、現実の求められている成果と乖離するといった出来事もよく観測されます。

 

自分の管理のためにメンバーの時間を必要以上に取る人・・・よくある毎日の「朝会」「夕会」問題です。メンバーを管理するがあまり、必要以上に時間を取ることはマネージャーの都合でしかありません。またメンバーの行動管理で改善できる部分も、モチベーションと同様の10%ほどしかインパクトがありません。ただ、メンバーの行動があまりよくない仕組みだと理解して、よりより仕組みを自分で作るためのヒントにはなることはあります。行動を聞いて、それに対して文句や意見を言うマネージャーは論外です。

1on1を自分都合で勝手にリスケするなど、言動だけでなく行動や態度でも自分勝手なのがわかると、メンバーはガッカリします。

 

ゼロイチを作れない人・・・既存の施策をうまく回せるだけで評価される事業や会社であれば問題ないです。ただ何かしらのアップを求められる場合は、ゼロイチで何をやればいいか、どう試行錯誤すればいいかわからない人は向いていません。

いわゆるリーダーシップというものに一番近い要素です。

このゼロイチは社内だけを見ていては難しく、競合なりマーケットなりを見て選択するべきものが見えてきます。そうしたことから、社外とのネットワークや分析スキルが求められるケースが多いです。

 

おわりに

それこそ、マネジメントをすごいものだと考えてしまう人を見た時に、理想と現実のギャップに苦しんだり、メンタル的にもよくない光景を見てきました。

また、巷では「空気のいい環境の職場」的なニュアンスで「社会的にいい」言説の本が飛び回っており、そうした本を読むことでより普通のメンバーを気にしてしまって、ますます成果が出ないという光景も見てきました。

 

逆に、なんかよくわからないが成果は出ているのでチームが明るい、という光景も見てきて、自らがやってきたことも含めてこうした方がいいのではという部分を書いてきました。

 

本当ざっと思いつくままに述べてきましたが、言及した部分をチェックポイントとして、成果を出せるマネジメントの助けになれば幸いです。